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過熱するメタバース。熱狂を生む2つの潮流とは?

2021年10月、フェイスブックが社名を「メタ(Meta)」に変更し、メタバースという仮想空間の構築に力を入れていくと発表して以来、メタバース関連の盛り上がりが止まらない。関係する企業の大型調達や専門ファンドの設立も相次いでいる。

世界的VCであるアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)が主導する「Meta4 NFT Fund I, LP」や、ブロックチェーンエコシステムを開発するEnjin社の「Efinity Metaverse Fund」など、1億ドルを超える規模のメタバースファンドも設立されている。

さらに、デジタルアバターを用いたメタバースコミュニケーションサービス「ZEPETO」がNFTアイテムを販売したり、「Pokemon GO」を開発したナイアンティック(Niantic)とビットコイン関連のデビットカードを提供するフォールド(Fold)が提携し、ゲームプレイに応じたビットコインリワードを受け取れるサービスを開始したりと、ブロックチェーンとメタバースを組み合わせた事例も発表されている。

いま、「メタバース」がこれほど盛り上がっている背景には、かねてからのVR領域の興隆に加えて、ブロックチェーンおよびNFTの広がりも大きく影響しているだろう。現在は、さまざまなステークホルダーの目指すものが、たまたま「メタバース」というキーワードで合流した結果、多くの文脈がからまりあっている状況だ。

今回の記事では、その現状を整理してみたい。

デジタルだがバーチャルではない「新しいメタバース」たち

メタバース(metaverse)とは、コンピューターやネットワークのなかに構築された現実世界とは異なる仮想空間やそのサービスのこと。英語の「超(meta)」と「宇宙(universe)」を組み合わせた造語だ。

多くの人が共通して思い浮かべるのは、リンデン・ラボが2003年にリリースした仮想空間サービス「Second Life」だろう。Second Lifeでは、ユーザーは3Dモデルで自身のアバターを駆使し、仮想空間内を自由に歩き回り、他のユーザーとコミュニケーションを楽しむことができる。

こうした従来の流れを汲むメタバースと、冒頭で紹介したようなメタバースの新潮流との間には本質的な違いがある。それは「デジタル」ではあるが「バーチャル」ではない、という点だ。

メタバースの新潮流には、現実世界における所得と遜色のない金銭的価値を持つNFTや暗号資産を得られるものが存在する。例えば、NFT化されたメタバース内の土地が、数億円で売買されたりするといったようなことだ。

Second Lifeにも「リンデンドル」という通貨は存在していたが、これはゲーム内でしか利用することができなかった。これに対し、NFTや暗号資産は、法定通貨とスムーズに交換して収入を得ることも可能だ。複数のサービスを横断して利用することもできるし、サービスが終了してもブロックチェーン上に存在し続ける。

またフェイスブックのような実名を前提としたSNSと連動したメタバースのなかで生じるコミュニケーションは、現実の利用者と1対1で紐付くことになる。そうなれば、メタバース内の出会いが、商談などのビジネスチャンスや、恋愛や結婚などのライフイベントにも直結しうるだろう。

このように、いまトレンドとなっている新しいメタバースの多くは、私たちが生身で生活する現実世界との連動性が極めて高いという特徴をもつ。優劣の違いではなく、期待されていることや目指すものの違いから「メタバース2.0」と捉えることもできるだろう。

そんな「メタバース2.0」が盛り上がりを見せる背景を大まかに整理したものが、下の図だ。

筆者は、いまメタバースが盛り上がっている背景には、2つの潮流があると考えている。

1つがフェイスブックに代表されるSNSから発展したもので、コミュニケーション手段の1つとして、メタバースを構築しようというものだ(図の左上から右上へのベクトル)。

スマートフォンの登場によって、私たちの生活とインターネットは不可分となった。さらにSNSの登場によって、私たちは日常的なコミュニケーションの大多数をデジタル空間上で行うようになった。

このコミュニケーションは、画面上のテキスト送受信に始まり、絵文字、スタンプ、ボイスメッセージ、ビデオ通話と段階を経て発展してきている。さらにこれをアバターによるコミュニケーションに発展させようというのがSNSの延長線にあるメタバース創出の動きだ。

もう1つの潮流は、従来のバーチャルな面白さを大切にしてきた既存のメタバース1.0やゲームから派生したものだ(図の右下から右上へのベクトル)。ここでは、デジタル世界でのゲームプレイや獲得アイテム、実績などを経済活動と結びつけるための舞台装置として、メタバースを再構築しようという動きが生まれている。

かつてよりオンラインゲームの領域ではユーザー同士の交流を通じ、仮想空間内のアイテムを現実の世界で売買するRMT(real money trade=リアルマネートレード)が行われてきた。

しかし、従来のRMTはデジタルに完結するものではなく、口約束に近い合意形成に依拠してデジタルデータの受け渡しを行うため、対価の不払いや詐欺が発生しやすく、規制の対象にもなった経緯がある。

こうした取引を、リアルな経済活動とシームレスに紐付けようというのが、ゲーム業界でメタバースを再創出しようとする動きだ。

なぜ、いまメタバースが盛り上がったのか

いまメタバースが急激に盛り上がっている理由の1つには、新型コロナウイルスの感染拡大が挙げられる。

オフライン経済圏の大部分が機能不全に陥ったことで、Zoomなどのオンラインコミュニケーションツールの普及率が急上昇したことは周知の事実だ。同時に多くの芸能人や有名人がYouTubeでの活動を開始し、ライブ動画配信者や「にじさんじ」などVtuberの存在感も増した。

コロナ禍により、従来アナログな体験や物品を販売してきた業界も、デジタル経済圏へ活路を見出している。特に消費から体験へとビジネスモデルを転換してきたエンタメ業界や需要が外出機会と直結するファッション業界の打撃は著しく、商品の販売経路をデジタル化するだけでなく、利用シーンや体験そのものをデジタル化する必要に迫られている。

一方で、感染対策に各国が大規模な財政出動を行ったことでインフレが起こり、暗号資産の価格高騰が発生。そこで膨らんだ投資性資金がNFTへと流れ込んだことで、空前のNFTブームが巻き起こった。さらにブームのなかで、NFTの技術的特性がデジタル経済圏の創出に直結することが広く知られるところとなり、ユースケースが多様化していく。

このように、コロナ禍を起点とするドラスティックな情勢変化が、かねてから多くのファンと技術者によって支えられ線形に発展してきたメタバース1.0文化圏と交わり、フェイスブックの社名変更をきっかけに、「メタバース2.0」へと収斂しようとしている。

メタバース1.0に期待されているのは、バーチャルであるという魅力をフルに発揮したゲームコンテンツやコミュニケーションの喜び、アバターへ変身する面白さだった。

一方のメタバース2.0では、コンテンツやゲーム、コミュニケーションだけでなく、小売や広告、金融など様々なステークホルダー間のシナジーにより大きな期待が寄せられている。

無論、メタバース2.0が真にユーザーに必要とされるかは未知数だ。両者の違いは優劣ではなく期待されているものの差であり、今の情勢を踏まえて後者に期待するビジネス上の潮流が強まっている、という状況にすぎない点は留意すべきだろう。

経済活動の多くはデジタル空間へ移行可能に

では、こうしたメタバース2.0への期待がなぜここまで大きく膨らんでいるのか。単に「コロナ禍の影響でデジタル空間への期待が高まった」という話に留まる潮流なのだろうか。

筆者は、これまで無価値とされてきたデジタル空間での出来事が、ブロックチェーンとNFTによってすべてリアルな経済活動となり、アナログ商圏へも影響を及ぼすと考えている。

例えば、ナイキやアディダスなどスニーカーブランドは、既にバーチャルショップでNFTの出品を実施している。これは従来の限定スニーカーなどと同様に数量限定の商品だ。この商品をアバターに装着することは正当な購入者しかできない。さらに、メタバースでの行動をVRで追体験する場合、UX(user experience=ユーザー体験)は現実世界の購買行動とほぼ同じになる。

つまり、これはデジタル化による流通販売経路の変革ではなく、消費シーンや生活体験というライフスタイルの変革を引き起こすものなのだ。

そのため企業は、メタバース2.0の「デジタルだがリアル」という性質を前提に、既存の考え方から180度転換して新しいビジネス手法を考える必要がある。それゆえに何のしがらみもない新しいプレイヤーには参入機会のある領域になるだろう。

スマートフォンが普及したときと同様に、メタバース2.0は生活の一部をデジタル空間に切り取っていくものになる。実際にコロナ禍の若者たちは友人間のコミュニケーションを「どうぶつの森」や「PUBG(PlayerUnknown’s Battlegrounds)」などのゲーム内で行っており、これがメタバース2.0に置き換わる未来はそう遠くないかもしれない。

これからは、メタバースをキーワードに、ライフスタイルに寄り添うコンシューマ向けビジネスが盛り上がる時代が到来すると考えている。