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必要はIoTの母? 身近な課題を解決した6つのIoTチャレンジがすごい

2021年11月16・17日に開催されたSORACOM Tech Days 2021の最後を飾った「今日からあなたもIoTに挑戦!~IoTチャレンジ6選を一挙公開~」は、Tech Days 2021の各セッションで頻出した「チャレンジ」について、先駆者に聞いてみようという趣旨だ。2021年の春・夏に開催されたラズパイコンテスト、そしてQiitaのエンジニアフェスタの受賞者のうち、6人がLT形式でチャレンジを披露した。モデレーターはソラコムのMAXこと松下享平さん、ファクトリーこと今井雄太さんの二人が務めた。

モデレーターを務めたソラコムのMAXこと松下享平さんとファクトリーこと今井雄太さん

光とLINEでお知らせするSORACOM IoTボタンの呼び鈴を作る

トップバッターの今井孝太さんはメーカーの社内SEをしており、趣味でIoTやAWS、Power Platformなどを勉強しているという。Qiitaに書いた「SORACOMのIoTボタンで耳の遠い祖父のために光とLINEで通知する呼び鈴を作る」の記事が、QiitaのエンジニアフェスタのSORACOM賞を受賞したことで、今回の登壇につながったという。

今回、課題となったのは「耳が遠くて玄関のチャイムが聞こえない」という祖父の困りごとだ。チャイムが聞こえないので、お客に気がつかず、宅配便の荷物も受け取れない。そこでSORACOM IoTボタン(LTE-M)で呼び鈴を作った。具体的にはボタンを押すことで、AWS IoT Core経由でLambdaのコードが実行され、IFTTTから室内に設置したフィリップスのスマート電球「hue」が点滅。また、外にいてもLINE通知で、来客がわかるようになっている。

実際に祖父母の家に設置して使ってもらったところ、祖父からは「宅急便を受け取れるようになった!」「LINEが届くので、外出中の来客もわかる」と喜びの声が得られたという。一方で、祖母からは「おじいちゃんが帰宅時に毎回押すので、家の中がチカチカして困る」という声もあった。「おじいちゃんにはたくさん押すとお金がかかると言っています。総括してみると、二人とも喜んでくれたのでよかったと思います」と今井さんとコメント。「今回はAWSのサービスでしたが、ソラコムのサービスも使ってみたい」とまとめた。

LTのアイデアをたたえた今井ファクトリーは、「最近テレワークで呼び鈴に気がつかず困っている人もいると思っていて、そういう場面でも役に立つと思う」とコメント。自宅の玄関が遠くてWiFiが届かないという松下MAXも「LTE-Mなら場所を選ばないので、便利」と感心していた。

母と娘の不満を解消する「お迎え予告システム」を作る

続いて「娘のお迎えをLifeHackしてみたよ」というタイトルでSORACOMとIoTを活用した子育てのアイデアを披露したのがコネクティボの金築理恵さん。二児の母でもあり、Webエンジニアでもある金築さんはものづくりも得意。ラズパイピアノやBLE搭載の迷子防止タグなども作っているようで、多芸ぶりに驚かされる。

そんな金築さんの悩みは、二人の娘さんのお迎え。「保育園と小学校の学童の2カ所にお迎えに行っているのですが、いつも15分くらいは待たされる状態。たかが15分ですが、親としては少しでも早く帰って、夕食を食べさせたい」と金築さん。フルタイム勤務で帰宅が遅く、一日で一番忙しい時間にもかかわらず、娘の方はのんびり準備して、なかなか出てこない。世のお母さんの多くが抱える不満だ。

一方、娘の方にも「いつお迎えが来るかわからない」という不満がある。天気や仕事の都合でお母さんが迎えに来る時刻が読めず、遊ぼうと思っておもちゃを出したら、お母さんが来るということもよくあったという。そこで作ったのが娘さんにもお迎えがわかる「お迎え予告システム」になる。「娘にはLEDの付くラズベリーパイを持たせておいて、私が最寄りの駅を出たときに、ランプで知らせるのです。私がSORACOM IoTボタンを押すと、娘が動くので、まるで『娘リモコン』みたいになりました」と金築さんは語る。

次はシステム構成。SORACOM IoT ボタンでのクリックはSORACOM Funnelを経由して、AWS IoT Coreに到達。その後、SORACOM Beamを経由したMQTT通信で、娘さんの持つラズパイにリアルタイム通知され、LEDが点灯するという流れになる。

Webエンジニアである金築さんも、普段はAPI GatewayとLambdaを使うが、SORACOM IoTボタンとSORACOM Funnelならユーザーコンソールの設定のみで、プログラム不要ですぐに通知ができるという。また、SORACOM Beamも通常はデバイス側からのデータ収集に使うことが多いが、今回はリモート端末側にメッセージを送って遠隔操作するという普段と逆方向の使い方となっている。端末も娘さんが扱えるよう、単体で動作するよう設計した。SIMでデータ通信するためWiFiが不要で、モバイルバッテリで駆動するため電源も要らない。さらにsystemdでサービスも自動起動するようにしている。

実際に使ってみたところ、お迎えの到着時には娘さんの帰宅準備も完了し、待ち時間も大幅に短縮。娘さんもお母さんがいつ迎えに来てくれるのか、あらかじめ知っておけるので、遊びを中断することもなくなった。さらに帰宅準備の時間が短くなったので、学童の指導員にも好評。みんなを幸せにする「ライフハック」なLTだった。

郵便受けにリモートカメラを設置して中身を確認する

3番手として「SORACOMとラズパイで郵便受けの中身を確認できるようにする」というタイトルでLTを披露したのは、SORACOMパートナーのSIerに勤務している池田大さん。好きなサービスは「SORACOM Arc」。今回は個人としての参加で、ラズパイコンテストのメカトラックス賞を受賞したことで登壇になった。

続いて開発のきっかけとして。コンテストの賞品目当てもあったが、以前から郵便受けの確認が面倒くさいという課題があったという。「昔は高いところに済んでいたので、とても面倒くさかったけど、今は2階なのでそれほど面倒ではない。とはいえ、コロナ禍で外出頻度が減ったので、かなり億劫だった」と池田さんが語る。

この課題を解決すべく作ったのは、郵便受けの中を撮影できるリモートカメラ。ラズパイにカメラと郵便物を明るくするためのLEDライトを接続して、郵便受けの中に設置。一定間隔で郵便物を撮影し、画像をSORACOM経由で送信できるようにした。データはSOTACOM Harvestに保存し、スマホやPCからSORACOM Lagoonで確認するという。

池田さんは、「できるだけプログラムを書かずに実装する」「なるべくバッテリをもたせたい」「できるだけ安く作りたい」という3つを開発方針として掲げた。このうち重要なのが、「なるべくバッテリをもたせたい」という方針。そもそも郵便受けには電源がないため、モバイルバッテリで動作させるしかない。撮影時にLEDライトまで使うので、なるべく間歇動作が必要になる。

このニーズに応える“ナイスな装置”が「OnOff SHIM」というデバイスだった。これはラズパイのGPIOに取り付けることで、起動やシャットダウンを行なってくれる装置で、必要なときにデバイスの電源をリモートからオンにできる。また、一定間隔で微弱電流を流してくれる「USBloard2」というデバイスを活用することで、モバイルバッテリをスリープさせないようにした。

開発方針として掲げた「できるだけプログラムを書かずに実装する」に関しては、複数のコマンドを自動実行・シャットダウンするシェルスクリプトで実装できた。ただ、リモート制御のためのM5 Atom Liteのプログラムを記述する必要があったという。ただ、バッテリに関しては間歇動作させることで2週間もつようになり、コストも初期コスト1万6000円、ランニングコスト約600円で実現できているという。今後はメカトラックス賞でもらった「Slee-P3」を活用して、スケジュール動作やバッテリ切れ予測などもやってみたいという。

スマートロックではなく、ICカードで開けられるキーボックス

4番手は「ソラコムSIMとラズパイで日常をちょっと便利にするアイデア」ということで、北海道医療大学 歯学部の山下雅稔さんが研究室で使っているユニークなキーボックスを披露した。

山下さんは理学部の物理系を卒業してから歯学部に進むというキャリアを進んたこともあり、ラズパイやESP32が好き。物理学科時代になんとなくラズパイを購入し、図書館で出会った入門書をきっかけにのめり込んでいき、実験で温湿度制御や便利グッズの製作に熱中した経験を持つ。そんな山下さんが今回ラズパイコンテストのユーザーグループ賞を受賞したのはICカードで認証するタイプの回転キーボックスになる(関連記事:【工事無し】簡単にICカードでスマートロックを作る)。

世にスマートロックは数多くあるが、多くは既存の鍵をモーターで回し、ロック解除するというもの。山下さんもスマートロックを自作したことはあるが、基本的には工事も必要で、配線もいっぱい。コストも手間も手間かかる。そこで考えたのが、物理鍵を入れたキーボックスをICカードで開けるというアイデア。鍵を共有することにはなるが、暗証番号を打ち込むキーボックスと異なり、ICカードを使うことで誰がいつ開けたかを把握することができる。

今回はSORACOMを用いることで、WiFiのない環境でも安全に鍵を共有できるというメリットがあるという。「SORACOMの強みとして、費用が安く、送信場所が移動可能なので、固定のネット回線がない場所で導入しやすい。田舎や農場など無線が届かないような広大な場所での利用に向いている」と山下さんは指摘する。

山下さんが考えた活用分野や場所としては、(すでに使われている)農業分野や自販機のほか、歯学部ということで学校や会社等の訪問歯科検診を挙げた。イメージとしては、スマートグラスと音声認識を用いて歯科検診を行ない、そのままクラウドにデータをアップするような使い方が想定されるという。

LTを聴講した松下MAXと今井ファクトリーはキーボックスを開閉するというユニークなアイデアに関心することしきり。Qiitaの動画では非常にスムースに開閉する様子が見られるという。「こういうものが個人で作れる時代が来たんですね」と松下MAXは感慨深そうにコメントした。

穀物乾燥機の稼働状態や異常をいち早く知るためのIoT

5番手は「米農家がチャレンジ!稲作IoT」という農業IoTネタ。登壇した竹内稔さんは愛知県の稲作農業で、数年前から電子工作にチャレンジしている。昨年の2月にSORACOM Device Meetupに登壇しており、そのときは「春編」だったが、今回は「秋編」だ。

稲作の過程においては、稲を保存するために乾燥させる作業が必要になる。従来は屋外に干していたが、現在はコンバインで収穫した籾を穀物乾燥機で乾燥させている。日中に収穫し、夕方に乾燥機に入れ、夜通し熱風を当てて乾かす。ほとんどは設定すれば、翌朝の乾燥終了まで自動で行なわれるが、トラブルがあると米の品質に関わり、翌日の作業にも支障があるため、運転状況や異常がすぐわかるIoTを作ろうと思い立ったという。

実はこの手のものは既製品が存在しているが、メーカーごとの専門端末・専用クラウドで、対応はほぼ最新機種のみでWiFiも必要。なにしろ値段が高価だった。そこで、竹内さんはESP32マイコンで自ら作ることを思い立ち、子機(13台)から熱風温度、モーター稼働、警報ブザー等を親機に送信する仕組みを構築した。1分ごとに子機から集めたデータを親機がSORACOMのLTE-M経由でクラウドに送信しているという。

稼働状況はSORACOM Lagoonのダッシュボードで確認しており、時系列でも温度変化を把握できるという。また、異常時にブザーが鳴った場合は LINEに通知が来るという。1シーズン使ってみると、利用料は月330円/1ヶ月で収まった。SORACOMは月300MBまでは定額だが、実際使ったのは40MB程度。可視化で用いたSORACOM Lagoonも無料枠で収まったという。

今はモーターのオンオフだけだが、今後は水分値も把握していく予定。既製品向けの通信コネクタは用意されているのだが仕様が不明なので、既存装置の液晶画面をAIカメラで読み取らせてみたが、なかなか苦労しているようだ。また、熟睡しているとLINEの通知に気がつかないため、LINEの通知音に自分の声を設定し、Alexa経由でルンバを動かして、自身を起すという荒技も試しているという。

カメラと画像認識で子豚の出産通知 3つの課題はこうやって超えた

最後に登壇した赤平剛文さんは子豚の出産通知という畜産IoTのネタを披露してくれた。赤平さんは宮城県大崎市在住のシステムエンジニアで、趣味がラズパイで遊ぶこと。ラズパイコンテストでソラコム賞を受賞し、今回の登壇に至ったという。

システムを開発したきっかけは、養豚業を営んでいる奥さまの実家で「生まれたばかりの子豚が、寒さを防ぐための保温箱に入らず、そのまま冷たくなってしまうことがある」という話を聞いたことに端を発している。赤平さんは、豚舎に電源があるので、ラズパイとソラコムを組み合わせればできそうと感じ、さっそく子豚の出産通知システムにチャレンジしたという。

具体的には30分周期で豚舎の画像を撮影し、撮影した画像をLobeというツールで作ったTensorFlow Lightで画像認識。判定結果を画像を記載し、GoogleDriveに送信。子豚が生まれていたら、URLをLINEに送信するというものだ。赤平さんは、このシステム開発で直面した3つの課題について説明した。

1つめは、画像が真っ暗になってしまうこと。監視したい時間はおもに夜なので、照明を点けてもらったが、ずっと点けてもらうのは農家とっても迷惑だし、親豚のストレスにもなりそう。そのため、カメラを赤外線カメラに変更し、暗いところでも子豚を認識できるようにしたという。

2つめの「画像がいつの情報かわからない」という課題に関しては、ファイル名や更新日時で確認するのではなく、画像に撮影日時を書き込むことにした。「温度と湿度、子豚の認識率も画像に書き込んで、1枚でわかりやすくしました」(赤平さん)

3つめは親豚が複数いるため、設置位置が定まらないという課題。カメラを移動させながら使いたいのだが、移動するたびに設置位置がずれてしまうので、画像認識の精度が安定しなかった。そこで画像に目印を置いて、起動時に通知するようにした。これにより、設置位置のずれに気づくようになり、対象の親豚が違っても一定の位置で設置できるようになったという。まだまだ課題は残っているが、とにかく現場で使い始めたことで気づくことが多いと、赤平さんはまとめた。

話を聞いた二人も、現場ならではの知恵と工夫に感心。松下MAXが、「画像に情報を入れるというのは、まさに現場を経験したからこそ」とコメントすると、今井ファクトリーは、「使ってみてでてきたフィードバックを受け入れて、改修を重ねているのは本当に素晴らしい」と応じる。

どの事例も、まさに「必要はIoTの母」と呼べるような身近な課題がIoTに結びついており、納得感が高かった。また、さまざまな分野で応用可能な工夫やアイデアが数多く盛り込まれているのも特徴。IoTの最初のハードルを越えることで、どんな世界が見えるのか多くの視聴者に伝わったと思う。