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AIで自動運転のシミュレーションを変える「Waabi」の挑戦

昨年ステルスモードを脱したトロント本拠のAI(人工知能)スタートアップ「Waabi」が、自動運転車をトレーニングする高度なシミュレーターを開発した。このシミュレーターは、仮想世界であらゆる状況を想定し、ライバル企業が注力している公道テストよりも早く、徹底したトレーニングを行うことが可能だという。

Waabiの創業者でCEOのラケル・ウルスタン(Raquel Urtasun)によると、同社の「Waabi World」と呼ばれるプラットフォームは、実世界の状況をより正確に再現し、稀に発生する困難な“エッジケース”を作り出すことができるなど、競合他社が使用しているプラットフォームよりも包括的なテストを実現するという。精緻な仮想世界でソフトウェアを常時学習させることで、ロボタクシーからセミトラックまで、様々な車両の自動運転化が可能になる。

「当社のツールは、これまでで最もスケーラブルで高性能な閉ループシミュレーターであり、自動運転技術を広く普及させる鍵になる。Waabi Worldは、我々が“Waabi Driver”と呼ぶ自動運転ソフトウェアのテストを自動設計し、そのスキルを評価できる、没入型で反応性の高い学習環境だ。最終的には、Waabi Driverに運転スキルを教えることもできる」とUrtasunは話す。

ウルスタンは、トロント大学のコンピュータサイエンス教授を兼務しており、ウーバーの自動運転車開発チームでチーフサイエンティストを務めた経歴を持つ。彼女によると、Wabbiは現状ではソフトウェアの集中的なトレーニングに重点を置いており、Waabi Worldプラットフォームを他の自動運転車開発企業にライセンス供与する予定はないという。

「私たちは非常に早いスピードで前進している」とウルスタンは述べたが、詳細は語らなかった。

アルファベット傘下のウェイモやGMが支援するクルーズ、フォードとフォルクスワーゲンが出資するアルゴAI、アマゾン傘下のZoox、自動運転トラックメーカーのTuSimpleなどの自動運転のスタートアップは、厳密な公道テストを行うと同時に、シミュレーション上で膨大な距離を走行しているが、それでもロボタクシーや自動運転トラックがいつ広く普及するかは不明だ。

「ビジョンを持つ者」を意味する社名

Waabiという社名は、「ビジョンを持つ者」という意味のアメリカ先住民のオジブウェー語に由来する。同社は、2021年6月にステルスモードを脱し、8350万ドル(約91.5億円)を調達したことを発表した。同社の当面の目標は、Waabi Driverソフトウェアを自動運転トラックに適用することだが、ウルスタンはあらゆる車両に幅広い用途で導入することを目指している。

「自動運転車があらゆる状況に対応するためには、従来とは異なる新しいテスト方法を開発し、システムがあらゆる状況に対処できるようトレーニングすることが必要だ。他社の多くは、公道を使って何百万マイルも走行しているが、この方法は多額のコストがかかり、スケールさせることが困難だ。従来とは異なるアプローチが求められており、Waabi Worldはまさにそれを実現したものだ」とウルスタンは話す。

Waabi Worldが本当に他システムより包括的で堅牢であれば、Waabiにとって大きな強みになるだろう。Zooxの共同創業者でCTOのJesse Levinsonは、公道テストを増やしている理由の1つとして、シミュレーションソフトには制約があることを挙げている。

「シミュレーターは、公道テストに比べて有益な点が多いが、完璧ではないので、実世界で運転することも必要だ。我々は、仮想世界と現実世界に違いが全くないようなシミュレーターをまだ開発できていない。シミュレーターの性能は向上しており、現実世界でしか学べないことはどんどん少なくなっている。しかし、シミュレーションだけで全ての学習ができるようになるまでには、まだ時間がかかるだろう」とLevinsonは述べている。