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なぜいま発売? スポティファイの「賢くない」車載デバイス

スポティファイの経営幹部たちは道に迷ってしまったようだ。ポッドキャストをめぐる最近の騒ぎ(編集注:Spotifyで人気ポッドキャストを運営するジョー・ローガンが番組で新型コロナウイルスのワクチンの効果を疑問視する見方などを広げているとして批判を浴び、スポティファイ側の対策が不十分として一部のアーティストが楽曲引き上げを宣言する事態になった)のことを言っているのではない。いま問題にしているのは、彼らの焦点が定まっていないように見受けられる点だ。しかも、こちらのほうが解決するのはずっと難しい。

スポティファイは2月22日(米国時間)、例の「Car Thing」の一般販売開始を発表した。アップルの「Apple CarPlay」やグーグルの「Android Auto」を備えていない車でも、Spotifyが利用できるようになるハードウェアである。そう、スポティファイはハードウェアもつくるようになったのだ。

だが、これは愚策と言わざるを得ない。

すぐれた企業は、まず市場のニッチ(隙間)を見つけ、そこで競争上の優位を確保する。そうして、その優位性を生かせる新たなチャンスを見つけていく。単純だが、実績の重ねられてきたやり方である。

Car Thingもそれにならったものと思われている。Car Thingはクレジットカードほどの大きさのタッチパネルを備えた、プラスチック製外装のデバイスで、Spotifyのアプリに完全にアクセスできる。価格は約90ドル(約1万円)。この機器によって、Spotifyを車内に持ち込めるとされている。

だが実際はというと、これは「スマートフォン用の高価なリモコン」といったところの代物だ。インターネットへの接続やデータの保存、演算処理などのために、使うにはスマートフォンが必要になるのだ。スマートデバイス時代にあって、なんとも「賢くない」機器だ。未熟な企業の経営陣が、次にあてたい製品を探しているときに出てきがちな製品でもある。

さらに言えば、Car ThingはSpotifyのバージョンとしても最悪なものになってしまっている。

車への進出ではアップルやグーグルのほうがはるかに先行しており、消費者はネットとつながる最新の車やトラックを選ぶにあたって、CarPlayやAndroid Autoに対応していることを求めるようになっている。これらのソフトウェアが備わっていれば、Spotifyはもちろん、「Google Maps」や「Waze」「Apple Music」といった情報・娯楽系アプリを車の中で手軽に利用できるからだ。

対してCar Thingでは他社のアプリはいっさい使えず、Spotifyにしても2010年に戻ったかのような重たい動作になっている。

皮肉なのは、Car Thingもスマートデバイス時代に対応してつくられたものであるという点だ。昔の車は、いまの車では当たり前のように使えるようになってきている情報・娯楽システムを搭載していない。Car Thingはそうした古い車にもSpotifyを持ち込めるようにしたものだ。そこでは、ユーザーがスマートフォンを保有していることが前提とされている。

だが、ここに問題がある。ユーザーがiPhoneやAndroidのスマートフォンをもっているのなら、そもそもCar Thingは不要なのだ。Androidで「ドライブモード(公共モード)」に切り替えれば、Google MapsはSpotifyと連携するようになる。選曲や再生はすべて音声で行える。この点だけでもCar Thingの機能を上回っているし、追加でお金を払う必要もない。スマートフォン本体を使えば、Car Thingよりも性能の高いプロセッサーを利用できるメリットもある。

スポティファイの幹部たちも必死なのだろうが、空回りしてしまっているようだ。ストリーミング事業が成熟するなか、成長のために新たな事業を見つけようとしているのはよくわかるが、アップルやグーグルのシステムに対応していない昔の車をターゲットに据えるというのはどうにも理解しがたい。言うまでもなく、こうした車の市場は縮小しているからである。