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EV化されたクラシックカーが富裕層に人気、2年待ちの事例も

英国メーカーのクラシックカーをレストアし、エンジンを電気モーターに換装するビジネスが好調だ。この事業を行う英新興企業ルナズが、そう報告している。

ルナズが手がけるロールス・ロイス、ベントレー、アストンマーティン、レンジローバー、ジャガーの電動化モデルに対する需要は非常に高く、2022年、2023年納車分の注文リストはすでにいっぱいだという。旺盛な需要に対応するため、ルナズではこの12カ月で、従業員数を500%増やし120人にまで増強している。

ルナズは、イングランドのシルバーストンに本社を構えており(F1グランプリなどのレースが開催される「シルバーストン・サーキット」がある村だ)、著名な元サッカー選手のデービッド・ベッカムなども出資者に名を連ねている。

ルナズは現在、本社施設を拡張しており、これにより、年間110台の車両のレストア、再設計、電動化が可能になる。これは、2020年と比べて5割増しに相当する数字だ。

レストアと電動化を担うルナズ施設の延べ床面積は、2022年内に以前から400%拡張される予定だ。これにより、欧州、米国、アジア太平洋地域で「かなり伸びている」という売上に対応する。

ルナズによれば、同社の電動化されたクラシックカーは、新たな世代の買い手を引きつけている。

「(購入者の)女性や男性は、信頼性や使い勝手、サステナビリティに関する課題を理由に、これまでは高級クラシックカーのオーナーになることに二の足を踏んでいた人たちだ」と同社は述べている。「ルナズは、完全にアップサイクル(使わなくなったものに新たな価値を加えて生まれ変わらせること)された、大気を汚染しないクラシックカーを提供することにより、こうした人々の不満に答え、クラシックカーの所有を、未来を担う世代にとっても検討の価値がある選択肢に変えた」

当然ながら、これらのクラシックカーは決して安価ではない。ルナズがレストアを手がけた車両の販売価格は、電動化されたレンジローバーのクラシックカーで39万5000ドルから。これに加えて、購入した国や地域の税金がかかる。

ベントレー・コンチネンタルやロールス・ロイスのシルバークラウドのレストア版価格は47万6000ドル(税抜、以下同)、ロールス・ロイスのファントムVでは74万8000ドル、さらに、ラインアップに加わったばかりのアストンマーティンD86なら130万ドルに跳ね上がる。

初めて購入するクラシックカーに電動化モデルを選ぶ超富裕層の個人に加えて、ルナズの車両に関しては、送迎サービス業からの需要も復活し始めている。こちらは、ベントレー、レンジローバー、ロールス・ロイスの、乗客の送迎に特化したモデルが人気だ。

静音性が高く、ゼロエミッションのクラシックなリムジンは、都市中心部にあるホテルが送迎用に新たに追加する車両として魅力的だとルナズは述べている。同社初のロールス・ロイスやベントレーの電動版モデルも、間もなく納車となるという。

ルナズ・グループの創業者で最高経営責任者(CEO)のデービッド・ローレンズ(David Lorenz)は、こうコメントしている。

「ルナズにより電動化され、新たによみがえったクラシックカーに対する需要は、世界中で急上昇している。これは、英国の自動車史上に残る往年の名車の数々を後世に残すとともに、現代の差し迫った課題である、よりサステナブルな行動習慣への移行を実現するというコンセプトに、顧客が好意的に反応していることを裏付けるものだ。当社は、信頼性や使い勝手、サステナビリティに関する主要な課題を解決した。高い意識を持つ、まったく新しい顧客層を、クラシックカーを所有する喜びに導いていることを誇りに思っている」

ミレニアル世代のドライバーにとって、たとえ価格が高くなったとしても、環境に配慮した車を持つことは、優先順位の上位に位置するテーマだ。ルナズでは、同社顧客の「圧倒的多数」が、一般的に高級車を購入する層とは異なる、より若い年齢層であることも、こうした価値観の反映だとしている。

ルナズはまた、環境問題への意識が高い購入者向けに、漁網をリサイクルした素材を用いつつ、従来の羊毛素材と見た目や質感が変わらないカーマットをオプションとして提供している。さらに同社によれば、同社が販売する車両の内装には、100%リサイクル素材から作られた布地が採用されているという。

その他のアップサイクルの事例としては、ダッシュボードなどに搭載された計器類がある。これも、以前の車両のものを整備・レストアした上で、用途を変えている。例えば、以前は燃料の残量を示していた計器は、バッテリー残量を示すように作り変えられている。

ルナズで設計責任者を務めるジェン・ホロウェイ(Jen Holloway)は、以下のように述べている。「自動車史上屈指とされる名車の数々を新たによみがえらせる当社の取り組みは、単なるパーツの総和をはるかに超えた価値を持つクラシックカーの逸品を後世に伝えるという、極めて重要な試みだ。こうした名車の驚くべき伝説に、新たな章を書き加えていることを誇りに思っている」