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AIで「売れる服」が分かる? DROBEがファッション難民と業界を救う

日本で生産された服の約半分は、誰にも着られることのないまま処分されてしまう。小島ファッションマーケティングの調査(2018年)よると、国内で流通する衣料品(下着除く)29億点のうち、実際に購入されたのは13.5億点。消化率は47%にとどまっている。

この問題にテクノロジーの力で挑んでいるのが、「DROBE(ドローブ)」創業者の山敷守だ。同社では、AIを活用することで一人ひとりに合わせた商品を提案するパーソナライズファッションEC を運営するほか、収集したデータをもとに、「本当に売れる服」の開発も進めている。

IT業界でキャリアを積んできた山敷は、かねてから好きだったというファッションに「IT」をかけ合わせることで、“消費されない服”を減らす仕組みづくりに挑む。目指すのは、DROBEが店舗や既存ECに次ぐ「第3の選択肢」になることだ。

アパレル市場の縮小を防ぎたい

学生時代から「テクノロジーの力を使ってより多くの人の生活を幸せにしていきたい」という想いを持っていた山敷は、東大在学中に学生向けSNS「LinNo」を立ち上げた経験がある。その後2010年にDeNAに入社、2016年にボストンコンサルティンググループのBCG Digital Venturesに移り、育児や医療に関する事業開発を担当していた。

DROBEの構想が生まれたのはその時だった。事業開発の一貫で行っていた顧客調査で、女性からファッションの悩みが頻繁に挙がることに気がついたのだという。

「女性はおしゃれやファッションを楽しんでいる方が多い印象があったので、多くの方が悩みを抱えているということに驚きました」

そう語る山敷は、調査結果から“悩み”が発生する理由について、こう分析した。

「アパレル販売員にはノルマがあり、来店客が試着室を出た瞬間に『素敵です!』と盛り上げて買わせるような側面がないとは言えません。でもそうやって一時のテンションで買ってしまった服は結局着る機会がなかったりします。また、年を重ねるとともに冒険しなくなり、毎回同じようなアイテムしか手に取らなくなってしまう方もいるようです」

若いころはファッションを楽しんでいたという人でも、似合う服が分からなくなってきて「ファッションは難しい」「苦手」と感じてしまうこともある。こうした人が増えると流通量に対する消化率の低下、さらにはアパレル市場の縮小を招いてしまう。山敷は、その“負の連鎖”を止めたいと考えた。

山敷自身も、高校生のころはバイト代をすべて服つぎ込むほどのファッション好きだったが、大学で起業をしてからはオンオフ問わず365日をスーツで過ごしていたため、ファッションには自信がなくなっていたという。

「スーツで過ごした時期を経て、ファッションをもう一度楽しめるようになると生活が変わりました。外見だけでなく気持ちも華やかになり、仕事やコミュニケーションにも自信持てるようになりました」

こうした考えから、2019年4月に起業。翌年3月からDROBEの提供をスタートした。

納得して購入し、長く着れる仕組み

DROBEは女性向けのサブスクサービス。2週間〜3カ月に一度の頻度で、セレクトされた服や靴、アクセサリーなどの商品5~8点が自宅に届き、その中から気に入った商品を選んで購入する仕組み。購入しない商品は返送する。

取り扱いブランドはあえて非公開としているが、大手セレクトショップなど50社200ブランド以上(2022年3月時点)が参加している。スタイリング料金は一回あたり税込3190 円で、送料・返送料は無料。配送頻度や点数は選択することができるように設計した。

ユーザー数は、約10万人。ライフイベントや体型の変化によって「ファッションに関心はあるけれど、今は自信がない」という30代女性が中心で、都市部と地方の比率もほぼ同率だ。顧客が、自宅に送られてきた商品の中から1点以上購入する率は約8割と、高い数字を誇っている。

このサービスの肝になっているのが、独自の「スタイリング AI」。プロのスタイリストによる5万回以上の商品選定のデータをもとにしたシステムだ。顧客が登録したパーソナルデータ(嗜好や体型など約70項目)と、商品データ(サイズ・色・柄・素材など約1000項目)のデータを掛け合わせることで、顧客と洋服とのマッチ度を推定することができる。

DROBEでは、このデータをもとに100人以上のプロのスタイリストが顧客別にスタイリングを行っている。リピーターの場合は、過去の購入・返品などの行動履歴データも生かされるため、提案の精度が高くなるという。

こうしたAIとスタイリストとの“協働”も、重要なポイントだ。

「現状、AIだけでは100%満足いただけるご提案はできません。お客さま1人ひとりの体型やライフスタイルの悩みに合わせて服を選ぶスタイリストの方がいるからこそ、パーソナルに寄り添ったスタイリングを実現できています」

また、山敷がこだわっているのが、ただの買い物代行になるのではなく、顧客の中にない“正解”を届けること。顧客が事前に欲しいアイテムを伝えたり、DORBEから送られてくるアイテムをウェブ上で確認したりすることもできるが、今まで着たことのないような洋服にも挑戦してもらいたいという。

「店舗でも『目当ての服じゃないものが欲しくなってしまう』ことがあると思いますが、このセレンディピティこそファッションの楽しさだと思います。DROBEでは、スタイリストを介しているからこそ、ご納得いただける形で“発見”や“驚き”をお届けできるんです。ご購入いただいた後に、長く着ていただけることにもつながります」

「売れる服」を予測し、消費されない服を減らす

DROBEでは、「スタイリング AI」で分析・収集したデータを活用して、オリジナル商品の開発も行っている。

継続利用者の多いサブスクサービスのため、顧客の過去のデータから「3カ月後にどのような商品が好まれるのか」などを予測することもでき、本当に購入される商品のみを生産することが可能なのだ。

具体的な商品企画は、タグ(商品要素)の組み合わせをいくつか出した段階でAIによるシュミレーションを実施し、それを企画に反映している。例えば「ペプラムブラウス」は、シュミレーター評価の高かったタグ「フリル(裾部分)」×「パフスリーブ(袖部分)」×「ボートネック(首部分)」を組み合わせて商品化したものだ。

「袖部分は半身だけゴムの仕様になっており、きれいに見えつつ袖をまくっても落ちてこないようになっています。データだけに頼らず、こういった定性的な使いやすさもサンプル修正時に加えています」

また、一年間を通じで”鉄板アイテム”となっているのがプリーツスカート。こちらもシュミレーター評価の高かったタグ「ポリエステル」×「ウェストゴム」×「ロング丈」×「(やや)フレアシルエット」を組み合わせて商品化した。

「1stサンプルをつくった際には、トレンドをやや意識して光沢のある生地を採用したのですが、光沢の有無で迷いが生じたので再度AIシュミレーション実施しました。その結果、光沢なしの方が評価が高かったので、光沢の抑えられた生地に変更しました」

現在は実験段階で、約2000着を生産している。長く着られるデザインを意識しているため、シーズン中に売れなかったものは翌シーズンにも販売する予定。そのため、定価で9割以上は消化できる見込みという。

この予測技術や顧客からの意見は、DROBEで取り扱う他社ブランドにも還元している。例えば、「ブランドのターゲットは40〜50代だったが、意外と若い年代の方にも支持されている」「丈の長さが合わなくて返品される方が多かった」など、ブランド側も把握できていなかった細かなデータを提供できるため、重宝されているという。

「今後は、ブランドさんの製品開発にも活かしていただき、業界全体で“消費されない服”を減らしていきたい。そして、“ファッションを楽しめる人”をさらに増やしていきたいです」