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スマホやPCのパフォーマンスを低下させる「DRAM」の熱問題を解決するための突破口とは?

Dynamic Random Access Memory(DRAM)は主にコンピューターの主記憶装置(メインメモリ)として用いられるメモリの一種で、常に電力を消費する一方で大容量を安価に提供できるという利点があります。ところが、このDRAMが直面する「熱問題」が危機的状況に達してPCやスマートフォンの性能に影響していると、テクノロジー系メディアのSemiconductor Engineeringが報じています。

DRAMは半導体メモリを用いた記憶素子であり、チップ中の小さなキャパシタに電荷を蓄えることで情報を保持しています。この電荷は素子内部の漏れ電流によって徐々に失われていくため、DRAMでは数十ミリ程度の周期で電荷を補充する記憶保持動作(リフレッシュ)が必要です。リフレッシュのために電力を常時消費する代わりに、大容量を安価に提供できる点がDRAMの強みであり、記事作成時点では幅広い高性能デバイスに用いられています。

近年ではDDR5・LPDDR5・GDDR6・HBMなどさまざまなDRAMインターフェースが登場していますが、これらはすべて基本的な構造と仕組みが共通しており、「熱くなりすぎると電荷が失われやすくなりパフォーマンスが低下する」という欠点も共通しているとのこと。

アメリカの半導体テクノロジー企業・Nanteroの主要システムアーキテクトであるBill Gervasi氏は、一般的にDRAMは0度~85度までは正常に動作するが、85度を超えると性能に支障が出始め、95度を超えるとデータが失われ始める傾向があると指摘。また、これらの数字は最新の14nmプロセスに基づくものであるため、「10nm、7nm、5nm、または3nmにスケールダウンすると、何が起こるのでしょうか?連鎖は制御不能です」とGervasi氏は述べました。

DRAMは温度の上昇に伴って電荷が失われやすくなると、リフレッシュの頻度(リフレッシュレート)を上げることで対応します。ところが、半導体開発用ソフトウェア企業のケイデンス・デザイン・システムズで製品マーケティング担当グループディレクターを務めるMarc Greenberg氏は、「デバイスの温度が上昇し、キャパシタから電荷が早く流出することを考慮して、リフレッシュのサイクルがより頻繁になります。しかし残念なことに、この電荷のリフレッシュは電流を大量に消費するため、DRAMの内部で熱が発生します。熱くなればなるほどリフレッシュしなければならないのに、さらに熱くなり続け、全体が駄目になってしまうのです」と、悪循環に陥ってしまう問題点を指摘しています。

また、1つのメモリシステム内ではそれぞれのDRAMが近接しているため、1つのDRAMが熱によって故障した場合、同じシステム内にある他のDRAMも故障する可能性が非常に高いとのこと。アメリカの半導体テクノロジー企業・ラムバスの開発者であるSteven Woo氏は、「たとえ堅牢なサーバ用メモリシステムであっても、熱による故障で数枚のDRAMが失われるだけで、システム全体が故障してしまう可能性があります。つまり、メモリシステムにとって熱は非常に大きな問題なのです」と述べています。

故障までは行かないとしても、リフレッシュレートが高くなるとその分だけDRAMの帯域幅が奪われ、DRAMおよびデバイスのパフォーマンスが低下します。Gervasi氏は、「システムパフォーマンスの5%は、すでに書き込まれたものを維持するためだけに費やされています」「85℃を超える温度で動作させるためには、データの整合性を確保するためにシステム性能を犠牲にしなければなりません」と指摘しています。

これらの問題に対処するため、半導体業界は熱の問題を最小限にとどめ、信頼性を高めるためのソリューションを開発しています。たとえばLPDDRやDDR5ではダイに温度センサーが内蔵されており、周囲の温度に応じてリフレッシュレートを調整することで消費電力および温度上昇を抑えているとのこと。また、LPDDR5やDDR5のような非常に高密度なDRAMでは、電荷漏れが発生した際に周囲のビットセルを基にデータを復元するエラー訂正機能が搭載されており、熱問題に対処しているそうです。

加えて、ヒートシンクやファンといった一般的な冷却技術に加え、「チップにマイクロ流体チャネルをエッチングして、チップに冷却用の液体が流れるようにする」という技術も、10年以上にわたって業界からの注目を集めています。しかし、マイクロ流体冷却技術は実験室内で機能することが確認されているものの、実装するとなれば流体による侵食や漏れの問題を解決する必要があり、商業生産される可能性はそれほど高くないとのこと。

また、Nanteroはメモリ設計を根本的に見直し、電荷が漏れず電源がなくても記憶を保持できるNRAM(不揮発性ランダムアクセスメモリ)を開発しました。NRAMはカーボンナノチューブから作られた不揮発性メモリであり、極端な熱条件に耐えることが可能とされています。Gervasi氏は、カーボンナノチューブの熱伝導率は非常に高く、他の素材よりも素早く熱を拡散させられるため、チップに関連する熱の問題を回避する上でカーボンナノチューブが突破口になると考えているとのこと。

Greenberg氏は、チップであろうがその他の部品であろうが、熱を単に「後で修正できる不便」として扱うべきではなく、熱問題についてもっと根本から取り組む必要があると主張。「人々は必要な計算をするためにもっと大きなヒートシンクを買えばいいと思っています。バッテリー駆動の電子機器・スマートフォン・タブレット・電話などを作る人は、消費電力を気にしているのに熱についてはあまり気にしていません。消費電力を改善するためにも、熱の状況を改善するためにも、多くのシミュレーション技術を採用することができます」と述べています。

大規模なデータセンターでは冷却のために膨大な電力が使われていますが、もしチップの温度要件が緩和されれば、その分だけ冷却にかかる電力を削減することができます。以前、ある企業が電子技術業界の事業者団体・JEDECに対し動作温度の試用を5度上げるよう求めた際の試算では、動作温度が5度上がると3つの石炭火力発電の閉鎖に相当するほどの消費電力削減につながるという結果になったとのことです。