世界の折りたたみ式スマホの市場は、かなり奇妙な状況になっている。ほぼすべての国でサムスンが市場を独占している一方で、中国においてはサムスンの端末に代わる機種が10数種類もあり、各メーカーが市場を競い合っている。 そして、中国製の端末は決して見劣りするものではなく、むしろサムスンの折りたたみ式端末よりも優れたハードウェアを搭載している場合が多い。しかし、理由は不明だが、中国ブランドはこれまで海外でのこれらの端末のリリースを避けてきた。 しかし、この状況に変化が訪れた。ここ1カ月ほどの間に、2つの中国ブランドが新たな折りたたみ式端末を発表し、国外で発売しようとしている。2021年以降のほぼすべての中国製折りたたみ式端末と同様に、この2社の製品はサムスンの同カテゴリの機種よりもクオリティが高く、折り目のないディスプレイを備えている。 これまでの経緯から考えて、この2機種が北米で発売されないことはほぼ確実だが、アジアや欧州と中東の裕福な国々の消費者には、新たな選択肢が提供されることになり、この業界にとって大きな前進となる。これらの端末が、さほど売れなかったとしても、折りたたみ式のカテゴリにおけるサムスンの独占が終わることは意義深い。さらに言うと、ブランド間の競争の高まりは、常に消費者にメリットを与える。 この2つの端末は、HonorとOppoという中国を代表するブランドの製品だ。Honor の「Magic V」と呼ばれる端末は、すでに中国で知名度を獲得しており、2023年1月から海外展開を開始する。この端末は内側に折り畳める縦長の形状で、サムスンのFold 4よりも薄いボディの中に5000mAhのバッテリー(ちなみにFold 4のバッテリーは4400mAh)を搭載し、内側のディスプレイは開いた状態で7.9インチで、リフレッシュレートはリフレッシュレートは90Hzだ。 完全にフラットになる「普通のスマホ」 折りたたんだ状態の外側のディスプレイは6.45型で、従来のスマートフォンと同じアスペクト比という。この端末は、たたんだ状態でサムスンの端末のように隙間ができず、完全にフラットになるため、「普通の携帯電話」に近い感覚になる。 一方、Oppoも先日、「Find N2」という横折りタイプのデバイスと、「Find N2 Flip」と名付けられた縦折りタイプの2種類の端末を発表した。Find N2 Flipは海外発売が確定しており、Find N2は今のところ中国のみだが、Oppoは十分な需要があれば海外展開を開始すると述べている。 Find N Flipはまだテスト機の準備ができていないため、筆者は横折りタイプのFind N2のテストを行った。この端末は基本的にMagic Vsの長所を多く持つデバイスだが、サイズはやや小ぶりで、重さは233グラムと最軽量の折りたたみ端末であることアピールしている(ちなみにiPhone 14 Pro Maxの重さは240グラム)。 Oppoによると、Find N2は昨年のモデルのFind Nとほぼ同じサイズでありながら、ヒンジを再設計することで重量を42g減らすことに成功したという。さらに、Find N2のヒンジは、サムスンの折りたたみ式端末のように、折りたたむ途中で固定できるのがメリットだ(Honorの端末は、折りたたむ途中で固定できない)。 「折り目」が目立たない Find N2は横折りタイプの端末で、内部に7.1インチの大型ディスプレイを搭載しながら、コンパクトに持ち運ぶことが可能だ。外側のディスプレイは5.54インチで、2つのディスプレイはともに、120Hzのリフレッシュレートとなっている。 HonorのMagic VとOppo Find N2のディスプレイは、ヒンジの内側に空洞を作り、そこにスクリーンを挟み込んで折りたたむ構造を採用しているため、折りたたんだときにあまりシワが寄らないのが特徴だ。 サムスンのFold 4は、防水性能の高さや画面の輝度の高さなどの点で、まだいくつかのメリットがあるが、ディスプレイの内側に深い折り目がある点が、HonorとOppoの端末との比較で見劣りする。 内部コンポーネントに関して言うと、HonorとOppoの端末には多くの類似点があり、2端末ともにクアルコムのSnapdragon 8 Plus Gen 1チップを搭載し、超広角、広角、望遠の焦点距離をカバーするトリプルカメラシステムを搭載している。バッテリーはHonorの端末の方が大容量だが、Oppoの端末の方が重量が軽い。 Oppoのもう一つの折りたたみ式端末のFind N Flipは、より大型のFind N2の長所のほとんどを持っており、サムスンの端末よりも大容量のバッテリーを搭載している。さらに、3.62インチの巨大なカバーディスプレイを備えている点もメリットといえる。 価格はサムスンより大幅に安い さらに言うと、最も重要なのは、両機種の中国での公式小売価格が約1100ドルで、サムスンの1800ドルのFoldよりもかなり安いことだ。ヨーロッパや日本、シンガポールなどのアジア諸国で販売される際には、これ以上の価格になりそうだが、サムスンの折りたたみ式端末よりはずっと安いだろう。 筆者は、この2社の折りたたみ式端末の売上が、すぐにサムスンの端末を追い抜くとは言はないが、これらの端末がサムスンの脅威になることは確実だ。さらに、サプライチェーンの噂によるとグーグルが2023年に独自の折りたたみ式端末を発売する可能性も高まっている。いずれにせよ、このカテゴリに興味を持つ消費者の選択肢は、2023年にさらに広がることになる。
2023-01-03 19:12:13