新品互換用パソコン バッテリー、ACアダプタ、ご安心購入!
ノートpcバッテリーの専門店



人気の検索: ADP-18TB | TPC-BA50| FR463

容量 電圧 製品一覧

スペシャル

診断・創薬、認知症・介護ケア、カウンセリング、一目でわかるメンタルヘルス業界のスタートアップのカオスマップ

精神疾患を患う人は400万人を超え、今後も増加することが予測される。統合失調症は発症割合が一定の疾患であり、かつ少子化が進んできた我が国では減少すると思われるが、気分障害や不安障害は今も増加している。

その基盤の一部にある発達障害の問題、ひきこもりの問題、さらに高齢化がピークを迎えようとする我が国の認知症は2025年に700万人に達するとされ、これら全てを含むメンタルヘルス対策は喫緊の社会課題であるといえる。

この社会課題の解決に向けた、新たなテクノロジーの援用とサービスは、身体疾患のヘルスケアに比較して、メンタルヘルススタートアップと言われるような企業はそれほど多くない印象がある。

生活習慣病など身体疾患全般のヘルスケア、デジタルヘルス、ヘルステックに関連する企業のカオスマップは、スタートアップ、老舗企業も含めて作成されている。しかし、メンタルヘルス対策に関連するスタートアップ全体が各々いかなる課題の解決を志向し、全体としてスタートアップによるメンタルヘルス対策の現在がどのような像になっているのかは知られていない。

そこで、メンタルトレーニングアプリ「メンタルコンパス」を提供する株式会社メンタルコンパスにより、現時点で日本のメンタルヘルススタートアップがどのような課題に、どのような解決を提供しようとしているのかを可視化するため、「メンタルヘルススタートアップ カオスマップ」が作成され、発表された。

「診断・創薬」「認知症・介護ケア」「カウンセリング」など、それぞれの現状

カオスマップ作製にあたっては、主にSTARTUP DBと、経済産業省の大学発ベンチャーデータベースが使用され、そのほかインターネット上のニュースサイトの記事から検索・作成が行われた。アイコンに関しては、サービスではなく企業ロゴが使用されている。

■診断・創薬

非常にボリュームが小さくなっているが、これは我が国が昨今の診断・創薬に必須のテクノロジーの導入に関して、常に諸外国の後塵を拝してきた事情がある。

日本では遺伝子解析やゲノム編集などの新たなテクノロジーが使用される流れに、資金が少ない状況が続いてきた。2019年現在、国の医療研究開発予算は1200憶円を超え、その中のメンタルヘルス部門というべき脳とこころの健康大国プロジェクトにも90億円が割かれているが、それでも諸外国の数分の一から数十分の一の規模にとどまる。今後、研究シードが産業化されるにつれ、このカテゴリーが増加してくる可能性がある。

■認知症・介護ケア

認知症は精神疾患全般と同様に、診断治療から、社会の中で介護を受けるうえで必要な生活分析、リハビリテーション等、複合的なサービスを社会生活に要する。これらに関連したサービスが精神疾患とは別個のスタートアップにより担われている印象がある。

創薬バイオベンチャー、遠隔診療、生活分析、認知症VRから巷に知られたいわゆる"脳トレ"を扱う大学発ベンチャーもある(脳トレといわれるものの、エビデンスレベルは学術的に高いとは言えないが、サービス現状を反映しており、また技術発展によってエビデンスレベルが高まる可能性もある)。

■アプリ・ゲーミフィケーションによる精神疾患治療

近年、米国では注意欠陥多動性障害に対するゲームアプリ治療がFDAへの承認申請中であり、2019年には、塩野義製薬がデジタル治療用アプリの開発を行ったAkili社とライセンス契約を発表している。日本独自のプロダクトは未だない。

アプリに関しても、医療やアプリ以外のサービス展開を持ったスタートアップに限定すると、それほど多くない。キュアアップが禁煙アプリ等ですでに実績を持っているが、メンタルヘルスに関してはうつ病治療アプリ開発への予告のみで、プロダクトの実際のローンチは現時点ではない。

■カウンセリング

カウンセリングに関しては、いわゆる医療としての心理療法のみではなく、ICTを用いた相談も含めてまとめている。現状心理療法として、エビデンスレベルが高いといえるものは、認知行動療法(CBT)を筆頭に、対人関係療法、EMDR(トラウマ治療の一種)等があるが、単純に学術的な意味でエビデンスレベルが高いという評価はほぼCBTに集中するといえる。

海外ではスタンフォード大学を始め、AIを用いたチャットボットによるCBTアプリを開発しているが、わが国ではCBT等をデジタルで提供できている状況はなく、ICTによる相談の提供に占められる印象となっている。

日本では心理療法は医療保険サービスの一部として提供されるイメージがあり、かつ2018年には公認心理士資格ができたこともあり、市場サービスとしては、エビデンスレベルの高い心理療法の提供がなされているというよりは、より健康な人の悩みを解決する、専門機関につなぐといった方向にあるようだ。

■発達障害就労支援

海外では、GoogleがGoogle GlassesやVRテクノロジーを使用したASD(自閉症スペクトラム症)の対人コミュニケーション支援方法を発案している。日本では、こうした特性から社会環境に生じる障害をテクノロジーで介入・解決するようなスタートアップはいまだ見つけられないが、プログラミングを享受・身に着けることで社会への再包摂を実現しようとするスタートアップを一種のテック企業として取り上げられている。

■睡眠

睡眠は、すべての精神疾患の軽快増悪因子として重要なものだが、日本人の平均睡眠時間は短く、良好な睡眠をとることは、健康な人を含めての国民的課題になっているといえる。このため睡眠は企業におけるヘルスケア対策にも親和性があり、to B、toC両面で展開がみられる。

■産業保健・EAPサービス

2015年12月に、ストレスチェック実施の義務化が行われて以降、産業保健領域でのメンタルヘルスへの関心は、以前より継続していたものに加えてさらに大きくなった。このカテゴリーは最も参入が多い分野といえる。

ストレスチェックサービスのみを考えると、ゆうに30以上の企業があるが、ここでは、睡眠アプリや心電計によるストレス計測等のテクノロジーを用いるなど、より総合的なEAPサービスを展開している企業をあげた。人材育成、採用支援、組織分析、健康経営などEAPサービスの内容により更に細分類できる。

カオスマップからみる我が国のメンタルヘルス対策の現在

これらのカテゴリーを、医療とメンタルウェルネスに分け、各々を個人治療から福祉支援も含む社会治療の軸、個人的ウェルネスから組織ウェルネスの軸で分けてみると、日本のメンタルヘルス対策の現在地が見える。

遺伝子研究をベースにした診断・創薬分野の少なさからは、GWAS(Genome-Wide Association Stud:全ゲノム解析)など、当初潤沢な人的資源と資金が必要とされた研究に立ち遅れたてしまった日本の状況がスタートアップにも反映しているように見える。

社会としては高齢化の進行が世界の中でも最も急激であるために、認知症・介護ケアへの関心は高いものの、特に社会的疾病対策の構造が、OECDから指摘されるようにインクルージョンが立ち遅れて隔離をしてきてしまった精神障害対策に制度構造の性質が類似するがゆえに、その中身はメンタルヘルス全体の縮小版のようになっているといえる。

中等度までのうつ病や不安障害への心理療法の薬物療法と同等の有効性が示されているにも関わらず、入院・薬物療法中心で成り立つ制度報酬構造のわが国では、心理士の社会的なプレゼンスが低く、カウンセリングの科学的検証やそのテクノロジー化が遅れているといる。

精神障害者の社会的隔離状況は改善に漸進しているとはいえ、現状もダイバーシティを実現しているとはいいがたい社会に十分にインクルージョンされない中、一般人はいざ自身が疾病になるまで、精神的問題に関心を向けにくく、メンタルヘルスに必要な個人の感情や心の動きを言語化することが得意ではない。

このため、心理療法そのものがテック化されるよりは、相談をして言語化して手伝ってもらうといったカウンセリングサービスになるのかもしれない。とはいえ、少しずつ日本社会は精神障害者のソーシャルインクルージョンを進めてくる中、企業というコミュニティにおける産業保健コンプライアンスとしてのストレスチェックを通じて、それを関心の入り口にした従業員サービスとしてのメンタルヘルス対策が先行し、拡大している。これらスタートアップのカオスマップからは、このような日本社会の状態を見て取れる。