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シリコンバレー101 第816回 ヤフーとLINEの経営統合、米国だったらデータ統合に厳しい目

検索サービス「ヤフー」を手掛けるZホールディングスとLINEの経営統合が発表されたが、これは今の米国だったら規制当局の承認を得るのが難しい統合である。巨大IT企業が支配的な現状、「強い者がどんどん強くなり、差が開く」というのは的を射ている。しかし、ニューヨーク大学のSimon Sinek教授曰く、ビジネスは同じプレーヤーが同じルールで同じ決着の方法を競う「Finite game」ではない。プレーヤーが変わればルームも変わり、勝利の条件も変わり続ける「Infinite game」だ。そして今、欧米においてネット産業のゲームは大きな変わり目にある。

米司法省で反トラストを担当するMakan Delrahim氏が先週金曜日にハーバード・ロー・スクールで開催された反トラスト (日本の独占禁止法に相当)に関するカンファレンスにおいて、「デジタル市場で起こっている深刻な競争問題に反トラスト法執行当局がこれ以上目をつぶることはできない」と明言した。

消費者データは"デジタル経済発展の燃料"だ。それを確保するための行きすぎた行為が消費者のプライバシーを侵害し、独占による健全な競争の阻害が次第に強まっている。

今年6月、米議会の下院司法委員会が反トラスト法違反の可能性を視野に「GAFA」と呼ばれる米ネット大手4社 (Google、Amazon、Facebook、Apple)の調査を始めると発表した。その一環として、現代社会におけるデータの役割、デジタル市場や消費者市場に及ぼす影響について調べている。なぜなら、現行の反トラスト法や競争政策ではデータのダイナミクスに十分に対処できないからだ。一時「ネット大手の分割案」を扱うニュースが出てきた時期があったが、80年代のAT&Tの時ように、巨大になったものを分割して解決するような問題ではない。

例えば、数週間前に発表されたGoogleによるスマートウォッチ/活動量計のFitbit買収である。Fitbitはウェアラブル市場で有数の企業ではあるが、同市場における支配的な存在を挙げるならAppleだ。Googleはウェアラブル市場で苦戦しており、GoogleとFitbitは同市場で直接競争する関係ではなく、それらの統合によってAppleとの競争が活性化する可能性が高い。だから、これまでだったらすんなりと承認されそうな案件なのだが、ヘルスという重要なデータがGoogleに集まるリスクから欧米の反トラスト法執行当局やプライバシー擁護団体などから懸念の声が噴出している。Electronic Privacy Information Center (EPIC)は、下院司法委員会のヒアリングよりも先に、買収後のデータ収集の影響の調査を連邦取引委員会 (FTC)が実施するべきだと訴えている。EUで反トラスト問題に関わるMargrethe Vestager氏は、プライバシー問題や競争阻害の引き金になり得るユーザーデータを統合する取り引きは精査の対象になるとしている。

今のデータ問題はプライバシー問題と密接不可分だ。ところが、パーソナルデータを蓄積して巨大化するネット大手に対して、今の規制当局はプライバシーの領域でそれを分析したり調査したりする法的枠組みを持たない。仕方なく、クラシックな反トラスト法を持ち出しているものの様々な矛盾に直面している。ネット企業のデータ利用の規制、プライバシー保護違反に対する莫大な罰金、別のプラットフォームにデータを自由に移せるデータポータビリティ法案など、新たな法的枠組み作りから始まっているのが現状だ。

それならプライバシー保護法案の枠組みで解決できそうだが、それも十分ではない。Appleはプライバシーに関して保護を徹底しており、その点では他のGAFAと同じようには扱えない。だが、プライバシー保護を武器にAppleはユーザーを呼び込み、データがあるからユーザーはAppleの製品やサービスにとどまり続ける。それによってApp Storeが支配的な存在になり、またiPhoneからApple Music(音楽ストリーミング)、iPhoneからApple Watch(スマートウォッチ)、iPhoneからApple PayまたはApple Card(金融サービス)というように、1つの市場における支配力を使って異なる市場での競争を有利に進めていると指摘されている。

どのような解決策が講じられるかまだ見通しは立たないが、1つ確かなのは「反トラスト法執行当局がこれ以上目をつぶることはできない」(Delrahim氏)という待ったなしの状況であり、80年代のAT&T分割のような大きなゲーム・チェンジが現実味を帯びているということ。それは「巨大を悪」とする従来の反トラスト法の枠組みでの解決では終わらない。だから、ZホールディングスとLINEの経営統合は、これがもし米国での案件だったらGAFAに対する競争を強めるものであっても厳しい調査の対象になる。

経営統合によって稼ぐ力は強化される。ただ、規模の経済で凌駕できたのはこれまでの力学であって、これから先を見据えた場合、新たな枠組みの中でいかに成長を実現していくかが重要になる。