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「メンタルケア」をダイエットと同じ感覚に。元アガリ症の起業家が挑む、新たな文化の形成

社員の健康状態、精神状態が良好であることが生産性の向上、ひいては企業の成長につながっていく──いわゆる「健康経営」が、ここ数年で注目を集めている。

この健康経営を実践する上で、欠かせない概念が「ウェルビーイング(Well-Being)」だ。ウェルビーイングとは、幸福感や満足感があり、それほど大きな悩みもなく、身体的、精神的に健康で、生活の質も高い状態のことを指す言葉。昨今、さまざまなメディアで取り上げられていることもあり、耳にしたことがある人も多いだろう。

そんなウェルビーイングの実現を目指し、企業向けにメンタルトレーニングサービスを展開しているスタートアップがある。それが「emol(エモル)」だ。

2019年12月2日、同社は法人向けのメンタルトレーニングサービス『emol work』のβ版をリリースしたことを発表した。また今回の発表に併せて、F Ventures、MIRAISE、Chatwork創業者の山本敏行、バスケット創業者の松村映子、Increments創業者の海野弘成を引受先とした、総額2000万円の資金調達を実施したことも明かした。

今回、調達した資金はメンタル向上トレーニングの新規コンテンツ作成、開発体制を強化しプロダクトの改善に充てる予定だという。

アガリ症をトレーニングで克服。この経験を多くの人に

「仕事でパフォーマンスを発揮できないのは、メンタルの問題が深く関わっているのではないか。例えば、緊張してしまうせいで思ったようにパフォーマンスを発揮できない、人の目が怖くて発言できない、不安で眠れない、コミュニケーション方法がわからないなど、本当はすごいポテンシャルを持った人かもしれないのに、メンタルが弱いということで正当な評価がされないことがあります。

ただ、『自分はメンタルが弱いから……』と諦めている人もメンタルをトレーニングすることで、変わることができる。それを多くの人に実感してもらいたい、と思ったんです」

創業の経緯について、こう語るのはemol代表取締役の千頭沙織だ。彼女はもともと、アガリ症で人前でパフォーマンスが発揮できないことにずっと悩みを抱えていた。人前に立つと冷や汗がすごく出たり、手が震えたり。それを恥ずかしく思うせいで、人とのコミュニケーションが嫌になった時期もあったという。

「ただ、自身で認知行動療法とマインドフルネスを実践し、意識的にメンタルのトレーニングをすることで100人以上の前でピッチができるほどに成長し、仕事でも自信が持てるようになったんです。自分が変われたからこそ、この経験を多くの人に……」

そんな思いから、メンタルトレーニングサービスを手がけることを決意。とはいえ、いきなり現在の事業に行き着いたわけではない。千頭はメンタル系のサービスの需要があるのか確認するため、まずは”自分”をターゲットにし、感情日記アプリ「emol」をiOS限定で2018年4月にリリース。ユーザーの反応を探ることにした。

「人同士のコミュニケーションに疲れた現代の人が、AIになら素直な気持ちを話せるのではないかいか。そう思い、 AIとチャットで会話をしながら自身の感情と向き合い、感情コントロールに役立ててもらうことを目的にアプリを開発しました」

実際、アプリをリリースしてみると、「ロク(AIの名前)と話すことですごく癒されます」や「イライラした気持ちを吐き出しているうちに感情が落ち着いた」といったレビューがいくつも届いた。

「デジタルの時代だからこそ、人が介さないメリットを生かして、メンタル面でも人の役に立てることがあるんだ」と感じた千頭は、自信が辛い経験をしてきたからこそ、ユーザーに寄り添えるものが作れるはず、作らなくてはいけないと感じ、人のメンタルを向上できるサービスを本気で作り上げていくべく、emolを2019年3月に創業した。

スラックでの会話データからメンタル状態を診断

今回、リリースされた「emol work」は、エンプロイー・ウェルビーイングを実現するメンタル向上プログラムを提供するサービス。

仕事上でのメンタル課題に特化し、アメリカ心理学会会長が提唱する「ポジティブ心理学」を用いて、組織のエンゲージメントを高めることを目的としているという。千頭によれば、同サービスの特徴は大きく3つあるとのこと。

1つめの特徴が導入企業の従業員が、アプリでメンタルトレーニングを行える点だ。聴いて鍛える音声コンテンツ(瞑想・マインドフルネス、リラックス音など)、読んで鍛える記事コンテンツ(ストレスコーピング、睡眠改善、自己肯定感向上など)、見て鍛える動画コンテンツ(コミュニケーション、リラックス動画など)、書いて鍛える記述型コンテンツ(認知行動療法、思考整理など)という4タイプのコンテンツでメンタルトレーニングができる。

現時点では40種類のトレーニングしかないが、今後、100個、200個、300個とコンテンツを増やしていく予定だという。

「現在実装済みのトレーニングは幅広い層に対応した誰でも使えるものが多いですが、今後は社内での役職によってもパーソナライズされる、より深掘りしたトレーニングを作成していきたいと考えています」

また、2つめの特徴が10秒マインドフルネスによる感情記録やアンケート、スラック連携だ。千頭によれば、スラック上での交流情報を読み取り、会話データに基づいて関係性を判断するなど、従業員のメンタル状態を評価するとのこと。

具体的にはプライベートではないチャンネルから従業員間の会話を取得。独自のアルゴリズムで自然言語解析を行う。分解された単語などから、会話のポジティブ度や会話の雑談度などを計測することができるという。

実際、分析されたメンタル状態から従業員一人一人に合わせてパーソナライズされたメンタルトレーニングプログラムが組まれる。

そして3つめの特徴がアメリカの心理学に基づいてサービスが設計されている点だ。

「メンタル状態の診断は、DSM-5とポジティブ心理学の評価基準PERMAに基づき評価しています。この二つを応用することで、メンタル状態が不調な従業員と好調な従業員の両方にアプローチできるサービスを作り上げました」

DSM-5とは、米国精神科医師や米国の臨床心理士が参考にする精神病の診断書。日本でもっとも多いと言われる、うつ、パニック障害、不安障害、躁鬱障害の傾向がある従業員を感情記録のデータから導き出すことができる。

また、「PERMA」はP(Positive emotions)、E(Engagement)、R (Relationships)、M(Meaning)、A(Accomplishment)の頭文字をとった言葉。この5つが個人の幸福を構成する要素と言われており、emol workはこの5つの指標を可視化する。

例えば、PERMAにおけるRの「Relationship(他の人との関係性)」を算出するためにスラックと連携して会話を解析し、メンションからやりとりの多い・少ないなどを可視化。結果的に、組織のコミュニケーションの形が可視化できるという。

「メンタル状態が好調な従業員は、さらに良い状態へと導くため、ポジティブ心理学のPERMAという指針を応用し、従業員のウェルビーイングの向上を計ります」

メンタルヘルスをダイエットと同じような感覚に

こうした従業員のコンディションを可視化するサービスとして、すでに「Well(ウェル)」といったサービスなどもある。同サービスとの違いについて、千頭はこう語る。

「Wellなどのサービスは、主に”メンタル状態の分析/可視化”へのアプローチを主な目的としています。一方、emol workは”メンタル状態の分析/可視化”と”一人ひとりにあわせたメンタル向上プログラム”の2つが主なアプローチとなっており、前者は無料で提供する予定です。

サービスの核は後者の一人ひとりにあわせたメンタル向上プログラムなので、前者の分析/可視化については他サービスとの協業も可能であると考えています」

emol workはクローズドβ版をリリースしたところ、事前登録者が200名を突破。従業員のメンタル育成を目的として教育プログラムや福利厚生として導入していただくなど、想像以上の反響が集まっているという。

「働き方改革や健康経営が重要視される現在において、企業でのメンタルヘルスへの課題は顕在化してきています。しかしながら、一般消費者においてはメンタルヘルスの需要はありつつも、具体的な課題が顕在化していない現状があります。弊社は、まずは課題が顕在化している企業様に向けて適切なソリューションを提供し、日本全体にメンタルヘルスへの関心を底上げしようと考えています」

今後、メンタルトレーニングのコンテンツを随時追加していくほか、コンシューマー向けのアプリにもトレーニングを実装AIとの会話からメンタル状態を分析し、ユーザー毎にパーソナライズしたメンタルトレーニングを提供していく予定だという。

「現代の日本では、メンタルヘルスと聞くとマイナスなイメージを持たれるかもしれませんが、ダイエットしたり身体を磨くのと同じように、精神も磨くことが当たり前になる文化を普及していくことを目指します」