シャオミ 東アジア地区ゼネラルマネージャー Steven Wang氏 筆者撮影
12月9日、世界第4位のスマホメーカーであるシャオミが日本市場への参入を発表した。カメラ解像度1億画素を誇る「Mi Note10」をひっさげての新規参入だ。
日本市場には10年くらい前からファーウェイとZTEが熱心で、昨年、OPPOが日本にやってきた。シャオミは「ようやく日本参入」という感じだが、なぜこのタイミングなのだろうか。
●法改正で日本参入決めた
シャオミの東アジア地区ゼネラルマネージャーのSteven Wang氏は「我々は創業9年の若い会社だ。3年前の2016年から国際展開を勧めている。まず狙ったのが、世界で2番目に大きいマーケットであるインド。次にインドネシア、東南アジアを攻めていった。日本にも関心はあったが、日本のユーザーは複雑で要求も高かった。当時、参入は難しかったが、今ではリソースもあるので、参入を決めた」。
シャオミが日本参入を決めた背景は、社内リソースだけの問題ではない。
日本市場が大きく変化しており、参入できる余地があると踏んだようだ。
「日本でSIMフリーのオープンマーケットが拡大してきた。我々は世界のオープンマーケットで成長してきた。日本市場で10月から電気通信事業法が改正されたことも、参入を決めた経緯のひとつだ。キャリアの割引補助がなくなるので、シャオミのリーズナブルな製品ラインナップに注目が集まるのではないか。来年、5Gが導入され、市場に変化が持たらされることも追い風になりそうだ」
日本市場ではすでにファーウェイ、ZTE、OPPOなどが凌ぎを削る。ようやく日本参入を果たしたシャオミに勝算はあるのだろうか。
●勝算は「炊飯器」にあり?
「日本でスマホの勝算はあるのか」というストレートな質問に対して、Steven Wang氏は予想外の変化球を返してきた。
「我々はエコシステムを提供している。日本のユーザーにはライフスタイル全体で小米を知ってほしい。モバイルバッテリーやスーツケース、炊飯器。特に炊飯器は日本市場には関係の深い商品であり、ぜひ手にとってほしい」
「中国メーカーの炊飯器なんて」とお思いの人も多いだろう。炊飯器は家電の中でも特に日本のメーカーが技術力を争う分野である。釜の材質から、炊き方、保温の仕方など、家電メーカーが日々知恵を絞り、技術を投入し、新製品を開発している。そんな激戦区に中国メーカーが割って入ることができるのか。
「うちには三洋電機出身で日本人のエンジニアがいる。IH炊飯器を発明した人物だ。うちの炊飯器はすでに60万台ほど売れている。釜の厚さにこだわり、米に熱が均等に伝わり、早くふくらむ。炊飯器はWi-Fiに対応し、スマホ連携もある。炊飯器はご飯の硬さを自動的に記憶してくれて、好みによって調整できるのが売りだ」(Steven Wang氏)という。
もうひとつ、Steven Wang氏がプッシュしてきたのがスーツケースだ。
「大手スーツケースメーカーが発注している工場と同じところで作っている。そのため、品質は大手と同等だ。しかし、価格は大手の半分、3分の1、6分の1のときもある。旅行好きな若者がこぞって買い、その良さをクチコミで広げてくれている」
●「クチコミ戦略」で売価おさえる
シャオミが得意とするのがこのネットによるクチコミだ。
シャオミの製品は安価でありながら高品質というのを売りにしている。iPhoneが高くて買えないから、シャオミのスマホを購入。それが良かったからと掲示板やSNSに書き込み、それがクチコミとして広がっていくというわけだ。
「我々のマーケティング戦略は他社と違う。とにかくクチコミで広がる戦略を考えている。ソーシャルメディアでユーザーを広げていく。シャオミはCMをやらない。なぜなら、広告費用がかさめば、それが結果として価格に反映されることにある。我々は利益率を5%程度に収めるなど、安価な製品を目指している」
シャオミが狙うのはSNSをよく使う若者だ。若者が手が届く価格帯のスマホを買ってもらい、SNSのクチコミでユーザーを増やす戦略だ。
しかし、日本の若者が使うスマホといえば、圧倒的にiPhoneのシェアが高い。果たして、iPhoneの牙城を崩すことができるのか。「スマートバンドはiPhoneにもつながる。炊飯器もiPhoneのアプリから使える。どちらもiPhoneユーザーをシャオミに取り込むことができるはずだ」(Steven Wang氏)
●スマホ専業ではできないやり方
単なるスマホメーカーならば、iPhoneユーザーの牙城を崩すのは難しいかもしれない。しかし、スマートバンドやスーツケース、炊飯器などでシャオミを知ってもらい「いい製品だ」と認知させ、結果として次の機種変更でiPhoneからシャオミ製品に乗り換えてもらう作戦だとしたら、とてもしたたかだ。
スマホ専業メーカーにはできないやり方でもあるだけに、他の中国メーカーとは一線を画す戦略と言えそうだ。
2019-12-16 19:07:42