肥満や代謝異常で苦しむ人は世界に数百万人もいるが、冬眠をする動物たちがその治療に一役買ってくれるかもしれない。
クマをはじめとする冬眠動物たちは、エサが豊富にある時期に脂肪を貯め込み、食べるものに乏しい厳しい冬を切り抜ける。人間なら極端な体重の増加は不健康だが、そうした動物は春になれば健康な顔で目を覚ます。
アメリカ・ユタ大学の研究グループが注目したのは、冬眠動物たちが見せてくれる絶妙な代謝制御を可能にする遺伝的メカニズムだ。
同グループはかつて、ゾウが持つガンへの抵抗力やイルカの血栓防止機能など、動物たちに備わっている驚異的な生体機能を支える遺伝子を解析したことがある。
今回の研究は、そのときの方法を応用して、冬眠動物にもそれと似たような体脂肪調節スイッチが備わっているかどうかを確かめたものだ。
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肥満に関係する遺伝子のそばに存在する非コードDNA
研究対象になったのは世界の異なる生息環境に生息している、ジュウサンセンジリス、トビイロホオヒゲコウモリ、ハイイロネズミキツネザル、ヒメハリテンレックという4種の冬眠動物だ。
これらの遺伝子を解析したところ、いずれの種も独自に「並行加速領域(parallel accelerated region)」という短い非コードDNAを発達させていることが明らかになった。
しかもそれは、人間の肥満に関係するとされる遺伝子のすぐ近くにやたらと多く存在していたのである。
2019-12-17 17:25:46