ロボットや人工知能の技術を使って人間の能力を飛躍的に高める「人間拡張テクノロジー」が世界的に注目されている。最近特に目立つのは、パワードスーツのような、より人体との一体感があるプロダクトだ。
視力を補うメガネのように、本来道具や技術は人間の能力を向上させるものだが、これまでとは異なる背景があると、EYアドバイザリー・アンド・コンサルティングのアソシエートパートナーである園田展人氏は説明する。
「世界的に注目されている背景には、人口動態から見た社会課題があります。とくに日本では、生産年齢人口比率が世界に先駆けて減少し、これまでの産業競争力を維持するためには、こうした人間拡張テクノロジーを用いるほかないというのが我々の結論です」
人間のどの能力を拡張するかは、「脳」と「身体」の2つの方向性があり、また方法としては、「機械・情報的」もしくは「生物学的」なアプローチに分けられる。「脳+機械」ならAIのような方向性になるし、「身体+機械」ならロボットやサイボーグに近くなる。
実際、アメリカ軍ではかなり前から、重い荷物を背負ったまま歩兵が疲れずに歩けるパワードスーツや、機関銃を腕に負担なく撃ち続けられる「第3の腕」が開発されてきた。
開発目的は異なるものの、これらのテクノロジーは人手不足が叫ばれる介護の現場や、労働人口の高齢化が進む農業などでも有用だ。社会的な需要が高まり製造コストが下がっていけば、導入が進んでいくはず。特に、世界で最も少子化が進む我が国では、身近な存在になりそうだ。
まるで巨人になったような体験が味わえる
『スケルトニクス・アライブ』1000万円〜
身体全体を1.5〜2倍に拡張し、装着者の手足の動きをダイレクトに反映する人体拡張ギア。動力に電気は使われておらず、「三次元閉リンク構造」というメカニカルな仕組みを用いている。オーダーメイド形式で一般販売もされている。
エンタメ用途に特化しており、海外のイベントやショーでも人気。NHK『紅白歌合戦』で使われたことも。
累計出荷台数4000台以上出荷の実績アリ!
イノフィス『マッスルスーツ Every』13万6000円
人や重いものを持ち上げる、中腰姿勢を続けるといった作業時の負担を軽減するマッスルスーツ。「McKibben型人工筋肉」を採用し電気不要で使用できる。同社のマッスルスーツ累計出荷台数は4000台以上(Everyを除く)。介護福祉サービス、製造業、農業など幅広い環境で導入されている。
重量3.8kgと軽量で女性や高齢者にも使いやすい。薄型化によって狭い場所でも利用しやすくなった。
人の感情を読み取る力も拡張する
Empath『音声感情解析AI Empath』
声から人間の感情を解析するAI技術。機械学習をベースに、話すスピードや抑揚、トーンなどから「喜び」「平常」「怒り」「悲しみ」の4感情と「元気度」をリアルタイムに推定する。こうした人間の思考、感情へのアプローチも人間拡張テクノロジーのひとつだ。
会議で盛り上がった時は暖色、気分が沈んだ際は寒色に照明の色を変化させて可視化する。
2020-01-01 05:07:08