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不妊治療医が訴えられる 自分の精子を30年にわたり体外受精に使用した疑い

いったん決断したら、高いお金を投じながら辛抱強く向き合っていくことになる不妊治療。そこでは医師との信頼関係が何より重要になる。説明と異なる行為を医師が極秘のうちに行なうなど、あってはならないことだ。

■匿名ドナーの精子のはずが…

米国コロラド州在住の姉妹2名が、グランド・ジャンクション市で不妊治療クリニックを経営するポール・ブレナン・ジョーンズ医師に対する民事訴訟を起こし、波紋を広げている。

2人は「私たちの生物学上の父親は母の不妊治療を担当したジョーンズ医師、あなただ。匿名のドナーが提供した精子が使用されると説明され、母はその代価を支払ったにもかかわらず、あなたは他人の精子ではなく自分のものを使用した」と主張している。

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■DNA検査で意外な事実が判明

姉妹の姉は1980年に生まれ、妹は1985年に生まれた。2人が提訴に踏み切ったきっかけは、DNA検査で得られた遺伝子マーカーを入力することで自分の祖先系統を探り、親族を探してくれる有料サービス「AncestryDNA」を利用したことだった。

姉妹の母親は当時ジョーンズ医師のもとで不妊治療を受けていた。

体外受精にはそれぞれ「弁護士から」「医師から」と異なる男性から提供された精子が利用されると母親は説明されたにもかかわらず、「AncestryDNA」を利用したことによって姉妹の生物学上の父親が同じ人物であることを知ったという。

■異母きょうだいが多数存在

さらにその後、この女性には1970年代から1990年代という約30年の間に男女9名の異母きょうだいが誕生していたことも判明した。その全員が「母親がジョーンズ医師の不妊治療クリニックに通い、体外受精に成功した」と話しているという。

この全員の生物学上の父親がいずれもジョーンズ医師だとしたら、彼は30年にもわたりと同様の行為を働いていたことになる。匿名ドナーの精子を高額で買い付けたフリをして患者に代価を支払わせ、実際は自分の精子で代用するなど言語道断の不正行為だ。

■DNA検査ブームのなかで…

出生や遺伝性の病気に関する各種DNA検査の人気が高まる現在のアメリカでは、不妊治療に関連する不正行為の事実も露呈するようになってきた。

体外受精や精子や卵子の扱いについて、医師側の倫理崩壊や不正行為を「重罪として裁くべき」という意見も多く、どの州も早急な法整備が求められている。コロラド州議会では現在、超党派の議員たちが新法案の成立に向けラストスパートを図っているという。