これまでに複数の場所に住んだことがあるなら、新しいアパートや家に引っ越したときの感覚を知っていると思う。その部屋や空間が可能性に満ちあふれた真っ白なキャンバスのように感じられるのだ。だが大抵の十分なお金を持っていない場合には、結局その場所を古い家具で埋め尽くしてしまうことが多い。
私は何年にもわたって、このような経験を何度もしてきた。実家を出てから、私が手に入れた家具はすべて、安物を買ったり、リサイクルしたり、誰かにもらったりしたものだった。時代もスタイルもごちゃまぜだったが、私が手に入れたときには十分使えていた。結婚して引っ越しをしてからも、同じ家具をたくさん持ち歩いていた。
しかしそのうちに、多くのものに違和感を感じるようになって、それらを譲り渡し、自分たちの家庭を表現するような、そして自分たちの心に響くようなものを注意深く買ったり作ったりするようになった。しかし、表面の凹んだダッチモダンのコーヒーテーブルのように、一風変わったものもまだ持っている。それを見ると、20代の頃のカラオケパーティー後のベタベタしたカクテルの散乱や、30代の頃の子どものおやつ(これもやはりベタベタだが)を思い出す。
それが今のiPadなのだ。これは、毎年おそろしい勢いで働き続けている、Appleのエンジニアリングチームとハードウェアチームによる美しく新しいモニュメントだ。だがそこには、まだ使えはするものの、古さを感じさせるiPadOSソフトウェアが詰めこまれているのだ。そしてそれらは日に日に場違いな感じを増している。
この記事は、もちろんAppleが現在出荷している、現在注文すると手に入る製品について書いている。しかし、Appleの世界開発者会議(WWDC)がわずか2週間強後に迫っている現在、私は基本的にこのiPad Proを、もう一度新たな視点でレビューしたいと考えている。
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皮肉なことだが、このモデルの最大のハードウェアアップグレードの1つに対する反応は、私の中では比較的控え目なものとなる。M1チップは本当にすばらしいものだ。ベンチマークテストでは、M1 MacBook Pro(M1マックブックプロ)と同等の性能を発揮しており、この意味でもAppleのラインナップは、パワーよりも大きさとユースケースの違いと考えることができる。しかし、率直に言って、たとえ2020年のモデルでも、私がテストしたほとんどすべてのアプリケーションや、私の日常的なワークフローのすべてにおいて、同じくらい速かったと感じている。
確かに新製品は超高性能で、最新のシリコンを搭載しているが、アップグレードしてもすぐには違いがわからないだろう。これはある意味、意図的なものだ。2021年4月、AppleのJohn Ternus(ジョン・テルヌス)氏とGreg Joswiak(グレッグ・ジョスウィアック)氏に、iPad Proについてインタビューした際に、彼らは新しい統一されたプロセッサー戦略と極めて優れたディスプレイは、開発者が活用することを期待して余裕を持たせているのだと語っていた。